私が選んだ作品たち
映画『THE LEGENG＆BUTTERFLY』

「大うつけ」の織田信長（木村拓哉）と、政略結婚により敵国に嫁いだ濃姫（綾瀬はるか）。出会いは最悪だったものの、徐々に強い絆で結ばれていく2人の30年の軌跡を圧倒的スケールで描く。

物語の焦点は、天下統一へと向かう信長とそれを支えた濃姫との夫婦愛。歴史好きの人には少し物足りないが、歴史が苦手な人には入りやすいストーリー展開だろう。

特に注目したいのは、桶狭間の戦いの前夜のシーン。信長を鼓舞する綾瀬はるかの演技が圧巻だ。実はこの濃姫についての文献は殆どなく、その人物像はベールに包まれている。

美濃の戦国大名である斎藤道三の娘であり、政略結婚で信長の正室になったというのが通説だが、本名はおろか夫婦仲が良かったのか悪かったのかさえも不明なのだ。

当たり前だが、歴史に目撃者は存在しない。過去にも仮説をもとに様々な信長像が映画化されたが、そこを現代のエンターテイメントにより装いを新たにした豪快さは、東映創立70周年記念作品として遜色がなく、高い完成度だと感じる。史実はどうあれ、彼らも戦国乱世に翻弄された1人にすぎないと考えると、いかに戦争が無意味であるかを代弁した映画だった。

それはそうと、日本の歴史作品には珍しいこの横文字のタイトル。歴史好きの小誌読者の皆様であれば、既にその意味に気付いているはず。