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私が選んだ作品たち
映画『燃えよ剣』

(掲載:2022年1月 回帰 第8号)

映画『燃えよ剣』

公開日2021年10月15日
監督:原田眞人
出演:岡田准一/柴咲コウ/鈴木亮平/山田涼介/尾上右近/山田裕貴/たかお鷹/坂東巳之助/安井順平/谷田歩/金田哲/松下洸平/村本大輔/村上虹郎/阿部純子/ジョナス・ブロケ

時代を追うな。夢を追え。

時は激動の幕末。時代に翻弄されながらも夢を追い戦い続けた男たち。京を舞台に疾駆した新撰組の「生き様」と「光と闇」を描いた司馬遼太郎作品が映画化、秋に公開された。

主役の土方歳三には今や日本を代表する時代劇俳優岡田准一。そしてその周りを超豪華俳優陣が華を添える。

本作品は封切り前から個人的に今年度一番の注目作だった。それには、歴史の中でもとりわけ幕末から昭和初期に造詣を深めていることもあるが、もうひとつ数年前から仕事で訪れている函館で、偶然にも土方歳三が銃弾に倒れた地や新政府軍の墓に遭遇したことに由来する。

幕末ファンにとって新撰組の存在は欠かせない。これまでにも新撰組を描いた作品はいくつも公開されているが、いずれも「生」と「死」、「明」と「暗」が表裏一体に綴られ、幕末の闇を象徴とする集団として描写されてきた。

加えて本作も最強の剣豪と謳われながらも病で力尽きたとされる沖田総司の最期や、場面ごとに腑に落ちない歴史的事柄が多く謎が深い。

歴史は勝者によって塗り替えられることは定説だが、それだけではなく、当時の世の中がいかに政治的閉塞感に包まれ混沌としていたかが伺い知れる。しかし真実がどこにあるのかを追究していくのが歴史ロマンの醍醐味だ。

「どうなるのか?は女の考えであり、男はどうするか?を考える以外に思案はない(原文省略)」。劇中で「新撰組はこの先どうなるのか?」と訊ねる沖田に土方が放った言葉が胸に刺さる。

松本 隆宏

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画像出典:映画チラシサイト