この映画を観るまで、私はこの方の名前を全く存じ上げなかった。それもそのはず、彼の功績が称えられ、政府が公式に名誉を回復させたのは、今からわずか21年前の2000年10月。終戦から55年後、杉原氏が亡くなって14年後のことだ。
このような偉業を成し遂げながらも、歴史の闇に葬り去られた人物が、一体どのくらいいるのだろうかと常日頃思う。史実というのは本来事実として記録されるべきだ。しかし、立場が違えば歴史は変わり、歴史は勝者によって作られる…というのが世の常。
杉原氏が発給したビザの数は、計6000人分。そして、この時生き延びた6000人の子孫は、現在世界各地で40000人を超えると言われる。たった一人の日本人が救った尊い命のバトンは脈々と繋がり語り継がれているのだ。
しかし、この数も正直なところ、どこまで正確かはわからない。ただ間違いなく言えるのは、異国の地で己れの地位を顧みず、人道を貫き通した真のサムライが実在したということだ。