こだわりの暖簾

陳屯酒 〜 特別な一軒、特別な一品が私の人生を豊かに育む 〜

(掲載:2021年1月 回帰 第4号)

【陳屯酒】

東京都世田谷区駒沢1-17-14
電話 03-3424-9884
営業時間 18:00〜24:00/定休日 日曜

URL : https://retty.me/area/PRE13/ARE20/SUB2005/100000110598/

今回お邪魔したのは、国道246号線沿いに佇む鉄板焼きの人気店「陳屯酒」。
店内は常連客で賑わうアットホームな空間で地元の隠れた名店だ。
近隣飲食店が激しく入れ替わるここ駒沢で、長年愛され続けている店主の仁美さんに、松本との想い出を振り返りながらお話いただいた。

「私が20年通い続ける理由」

昔は寡黙で直球タイプの青年だった

— 松本さんはよくお店に来られているんですか?

(仁美さん)松本さんには忘れられない程度にいつも来ていただいています。
(松本)最近は全然来れてないな。
(仁美さん)そういえば、ありましたよね一度。以心伝心みたいな。呼んだのか呼ばれたのか、そんな時が。
(松本)ありましたね。そろそろ仁美さんの顔を見たいなって思ってたら、仁美さんもそう思ってくれていて。

— 昔の松本さんはどんな感じでしたか?

(仁美さん)昔の松本さんって寡黙な人でね。武道をやってらっしゃったから、ちょっと失礼なお客さんがいたら「お前に物申す!」みたいに立ち向かうの(笑)
(松本)あぁ、それはちょっと言い合いになった時の話ですね(笑)お店に対して失礼な客がいたから、一緒にいた仲間と「失礼だ!楽しい雰囲気を壊すな!」ってね(笑)

— 松本さんはいつもどんな話をされていますか?

(仁美さん)やっぱり仕事の話が多いですね。この人ってものすごく素直な人で、物事の捉え方が非常に単刀直入で、それでいてご自分の地頭の良さをしっかり使った回答論が私はすごく勉強になる。
(松本)自分のことはよくわからないですね(笑)
(仁美さん)率直で素直な方だから色んなことを吸収できちゃうのかもしれないわね。

どこにお金をかけるか価値観は人それぞれ、
ユニクロ愛好家であることは変わらない

— 松本さんとのお付き合いが長いですけど、何か想い出深いことはありますか?

(仁美さん)そうね、30歳くらいで起業したのよね?
(松本)31歳ですね。
(仁美さん)あれはびっくりしたわ。「えぇぇぇ!」って。

— 起業して苦しい時期もあったと思いますが、どうでしたか?

(松本)苦しい時期だらけだよ(笑)
(仁美さん)この方はいつも優雅なんですよ。だから苦しいっていうのを私は実は知らないの。
(松本)上手くいってるかどうかなんて、人前で言うことではないですから。
 僕はあまり派手にすることもないし、昔とあまり変わらないですよね。下着はずっとユニクロだし、だけどゴルフに行ったり、いい車に乗ったりもちろんそういうのもあるけど、人の価値観はそれぞれ違うから。
(仁美さん)その通りですよね。
(松本)起業してしばらく、家賃が払えなくて家中の小銭を集めて…3年くらいで貯めた小銭の山を抱えて郵便局へ行ったんです。20〜30万くらいあったんですよ。それがあってすごく助かりました。
(仁美さん)本当に?!
(松本)わざわざ人に言うことじゃないけどそんな苦労もありましたよ。

自然体に戻れる場所は意識して作るようにしている

— 松本さんはお客様として、どのような思いで通われていますか?

(松本)23歳の時にここに足を踏み入れて、20数年なんですよ。苦しい時期も何もかも嫌な時もあったけど、僕の過去を知る人、戻れる場所…じゃないかな。

—松本さんのかっこいい所以外の一面があれば教えてください。

(仁美さん)このままの人だと思うのよね。苦しかった時期の話なんて、そんなこと微塵も出さなかったんだから。書籍も出されて、いつも向上して頑張ってる松本さんしか私にはわからない。
(松本)向上しているのとリターンが同じではないというのが今のでわかりましたね(笑)成長の軸と成果の軸はイコールではない。
(仁美さん)でもそこまで頑張れる、ある意味違う言い方をすれば見栄を張ってるのかもしれない。でもその見栄も男のプライドとして良いなと思う。

— さっき戻れる場所っておっしゃっていたと思うんですが。

(松本)定期的に戻れる場所って大事じゃないかな。立ち止まって自分を見つめなおす場所は、意図的に作らないと。昔から自分を知ってる人の前では、人は嘘をつきにくいし、利害関係がなければ、まっすぐ受け止められる。たとえば、仁美さんが具合が悪かったり、もちろん僕の事業がうまくいっていないと来れないだろうし、そういう意味でも元気で頑張らなきゃなと思います。
(仁美さん)長い時間の中で、忘れない程度に来てくれるっていう距離感が「お互い元気でやれてよかった」というのがあるのかしらね。

聞き手 山本 至人
文・構成 山本 さくら