こだわりの暖簾

「藤寿司」- 神奈川 相模原 - 〜 特別な一軒、特別な一品が私の人生を豊かに育む 〜

(掲載:2025年1月 回帰 第20号)

藤寿司】

神奈川県相模原市中央区富士見6-12-15
TEL 042-758-1120

【アクセス】
JR横浜線 矢部駅から徒歩15分

【営業時間】
《月〜土》昼 11:30〜14:00  夜
《定休日》日曜

地元で愛される人情寿司店

相模原で生まれ育ち、東京で修行を積んだ店主の佐藤茂さんは、昭和58年、25才の時に満を持して地元で開業した。なぜ寿司なのか、改めて感じる地元の魅力とは何なのか。その経緯や仕事への想いにフォーカスする——。

「『前略おふくろ様』のショーケンの板前姿がカッコよくてね。それに影響されたんですよ」と、寿司職人を目指したきっかけを振り返る佐藤さん。ちょうど同じ頃、連れて行かれた寿司屋で、板前のキレの良い仕事ぶりに目が釘付けとなりその決意は揺るぎないものになった。

高校を卒業すると、寿司を世界に広めた第一人者といわれる東京・青山大寿司総本店、大前錦次郎氏に師事。その後、東京で学んだことを相模原で活かそうと地元回帰を果たした。しかし、すぐに都会の需要と地元の需要に乖離があることに気付く。東京だと「綺麗だ」と評価される刺身の盛り合わせが、相模原では「高そう」という声になる。そこで佐藤さんは様々な工夫を重ね、お客様との向き合い方も変えてみた。

やがて近隣の官公庁になじみ客が増え、宴会利用の予約が入るようになる。しばらくしてランチ営業をスタート。すると、クチコミで一気に広まり主婦層やファミリー層などで連日店内は賑わった。「東京で修行しましたが、やっぱり地元の仲間たちの応援があったからこそ今日があるんです」と、地元への感謝を忘れない。

そんな佐藤さんは、母校の横浜商大付属高校で主力キャッチャーを務め、県大会ベスト8へ牽引した元アスリートでもある。店内には有名選手の色紙やサインボールが沢山飾られた展示スペースがあり、野球ファンも多く集う。

「お客さんに子供が誕生すると、お祝い寿司を作るんです。その成長した子供さんが、今ではお客さんとして通ってくれる。時の経過を感じて感動しますね。元気でやれるうちは、生涯現役でやっていきたいと思ってます」。

地元愛とは、自分を愛することに始まる。地域を慈しみ、人を慈しむ人の料理は「また食べたい」と思わせる力がある。佐藤さんの人情が反映した寿司は、今日も誰かの幸せな時間を生み出していることだろう。