文化倶楽部

私が選んだ作品たち
映画『ショーシャンクの空に』

(掲載:2025年1月 回帰 第20号)

映画『ショーシャンクの空に』

1994年9月10日公開(アメリカ)

監督・脚本:フランク・ダラボン
原作:『刑務所のリタ・ヘイワース』/スティーヴン・キング
出演:ティム・ロビンス/モーガン・フリーマン/ボブ・ガントン//ウィリアム・サドラー/クランシー・ブラウン/ギル・ベローズ/ジェームズ・ホイットモア ほか

— 人間の心は石でできているのではない。心の豊かさが必要だ —

初めて観たのは20代の時。エンドロールが流れる頃には、ただただ感情のうねりに支配され、言葉を失ってしまったのを昨日のことのように覚えている。ストーリーを動か静に分類すると間違いなく「静」なのだが、観客に媚びない監督の姿勢と独特のテンポが私に強烈なインパクトを放ったのだ。

言わずと知れた本作は、1994年、「レオン」「フォレスト・ガンプ/一期一会」「スピード」など、稀に見る映画豊作年に公開された。

刑務所という閉ざされた空間で日常的に横行する暴力と不正。その非日常のなかで、レッドは、ある日入所してきた新入りのアンディが目に止まる。信念を貫きながら、知性と職能で権力に対抗し、ゆっくりとそして確実に道を開いていくアンディ。徐々に絆を深めていくふたりは、ある約束を交わす——。

監督、脚本はフランク・ダラボン。妻殺しの冤罪で投獄された元銀行員・アンディ役をティム・ロビンス、刑務所内の古株・レッド役を名優モーガン・フリーマンが演じた。

私はハリウッド俳優のなかでも、とりわけモーガン・フリーマンが大好きだ。唯一無二の存在感とバリトンボイス。セリフがなくとも背中だけで語る演技力は、どの作品でもきっちり場面を整える凄さがある。このレッド役を演じられるのは世界中を探してもモーガン以外に考えられないし、彼なくしてこの名作は成り立たなかっただろう。だが、素晴らしいのは俳優陣だけではない。絶望と希望、光と闇に焦点を当てたヒューマン作品を、緩急あるカメラワークと小気味良い編集でキャストの演技を引き立たせた製作陣も秀逸だ。派手さはないがじわじわと効いてくるのは、こうした屋台骨を支えるスタッフの力も大きい。

そして、忘れてはいけないアンディの生き様は、私たちに多くのことを与えてくれた。知識や能力というのは、こう賢く使うべきだということも。

語り継がれる有名なラストシーンは、映画全体のメッセージが凝縮され圧巻だ。まだ観ていない方は、最後までじっくり楽しんでいただき余韻に浸っていただきたい。