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映画『幸せのちから』

(掲載:2024年10月 回帰 第19号)

映画『幸せのちから』

日本 2007年1月27日 公開(日本)

監督:ガブリエル・ムッチーノ
脚本:スティーブン・コンラッド
出演:ウィル・スミス/ジェイデン・クリストファー・サイア・スミス/タンディ・ニュートン/ブライアン・ホウ/ジェームズ・カレン ほか

— — ”お前にはできない”なんて誰にも言わせるな。俺にでさえもだ。 —

今回紹介する映画は、2007年に公開された「幸せのちから」。
医療機器のセールスマンであるクリス・ガードナーは、事業の失敗により生活に困窮。妻に逃げられた挙句ホームレスに落ちぶれるも、息子とともに様々な困難を乗り越え、ついには成功を掴むというアメリカンドリームの実話を基にした作品だ。

家賃と税金を滞納しどん底のクリスが、ある日目の前に止まった真っ赤なフェラーリから降りてきた男性に質問をするシーンがある。「どうすればあなたみたいになれるんだ?」と。

この出来事がその後の彼の人生を180度変える転機となるわけだが、ベクトルが変わる瞬間は案外どこにでも転がっているのだなと感じる。しかし、チャンスに気付きすぐに実行できる力と、億万長者へとのし上がっていく思考は誰もが持ち合わせているわけではない。またどん底を味わった人間が、みな成功を掴むわけでもない。

作中のクリスは走るシーンが多い。商売道具を盗んだ人間を追いかける、代金が払えずタクシー運転手から逃げる。不運や不幸に見舞われるたびに彼はとにかく全力で走るのだ。走る理由はどうあれ、その姿は「決して諦めない姿勢」を私たちに教えてくれるだろう。

ウィル・スミスは来日会見で「クリス・ガードナーが極貧生活にギブアップすることなく息子を手放さなかったのは、彼の頭に息子を手放すという選択肢がなかったからだ。

諦めずに生き抜こうという気持ちを強く持てば、人間は気絶することなくいつまでも走り抜けられる」と語っている。守るものがある人間は強い。それが無条件の愛であればなおさらだ。

本作の注目は主演・ウィル・スミスとその実子であるジェイデン・スミスの親子共演。実の親子だからこそ成し得たふたりの自然体の演技が、さらに作品への吸引力を高めてくれるだろう。コメディやアクションものが多い彼にとって、新しい境地を開拓したともいえるヒューマン作品。まだ観ていない方はぜひ。