まなび

「群馬県 奧四万湖」
キャニオニング・サップ体験

(掲載:2021年7月 回帰 第6号)

【群馬県 奧四万湖】

豊かな自然を満喫できるアウトドアの聖地としても有名な群馬県水上エリア。
キャンプ、渓流釣りなどシーズンや目的に合わせたアウトドア体験や、ラフティング、キャニオニングなどのウォーターアクティビティが満載。

「グリーンディスカバリー」
群馬県渋川市赤城町津久田169
HP:https://greendiscoveryjapan.com/

「今年はいつ行こうかな」。

毎年春先になるとスケジュールを眺めながら、右手の人差し指はスマホの検索に忙しくなる。

キャニオニング(沢下り)とラフティングとの出会いは今から7〜8年前。当時小学校低学年だった息子のために、スペシャルな遊びはないかと探していたことから始まる。以来、毎年家族や親戚とだけでは飽き足らず、仕事仲間とも水上(みなかみ)へ何度も訪れるようになった。

息子のためにと見つけた遊びだが、いつしか私の方がどっぷりハマってしまった。きっと、読者の方は、私のことを「ゴルフと登山の人」と思っているかもしれないが、実は春〜夏は川の中でひたすらカッパになっているのだ。

この周辺にはアドベンチャースポーツを企画運営する会社がいくつもある。

今年はそのうちのひとつ 「グリーンディスカバリー」という会社のツアーに申し込んだ。初めて利用する会社だ。参加者は老若男女様々なので、当日運営会社が参加者の体力、年齢層等を見極め、1ツアーあたり6〜8名のグループを組んでくれる。

ツアーの流れはどこも基本似たり寄ったりだが、道具や装備、スタッフや設備等に大きな違いがある。また、一歩間違えれば命の危険を伴うので、ガイドの質も重要だ。 運営会社に迷ったら、国内唯一の公的ガイドライセンスを発行しているRAJや国際ラフティング連盟IRF等に加盟しているかどうかという点も判断基準のひとつになるだろう。

当日の朝、現地に到着して驚いた。いつも利用しているA社のネパール人ガイドWさんがいたからだ。話を聞くと、少し前にグリーンディスカバリーへ移籍したとのこと。顔なじみのガイドがいるのは心強い。

ちなみにネパールはラフティングのメッカだ。小さい頃から母国の大自然で鍛えられ、こうしてガイドとして来日し活躍するネパール人は多い。

今回私たちは、ラフティングではなく、キャニオニングとサップをすることにした。実はサップは初めての体験だ。春は雪解け水で利根川の水量が一気に増すが、夏は打って変わって穏やかになる。ラフティングで激流体験をしたい場合は春がオススメだが、夏はこのふたつが最適だろうと考えた。

ウェットスーツに身を包んだ私たちグループは、ひと通りの説明とレクチャーを受け、まずは奧四万湖の渓谷からスタートした。ここをプレイフィールドにしたキャニオニングは、5mの高い岩場から滝壺に飛びこんだり、10m級の急流をスライディングしたりとスリル満点の川遊びを次々と体験できる。経験者の私でも毎回初めは恐怖心が募るが、いざ飛び込んでしまえばなんのその。日常では味わえない刺激と圧倒的な爽快感がヤミつきになってしまう。

大の大人達がワーキャーと絶叫しては無邪気にはしゃぎ、悪戯っ子のように冷たい水を掛け合う。ここに恥や外聞など存在しない。大自然の中では、大人も子供も本能全開だ。

vol.6-p9-2

約2時間半のエキサイティング体験の後は、昼食を挟み奧四万湖へ移動。いよいよサップだ。

到着してすぐに視界に飛び込んできたのは、神秘的な美しさを放つコバルトブルーの湖面。見る人の心を惹きつける幻想的な色は、時間や光の加減によってくるくると変化する。

パドルを漕いで水面を移動するこのスポーツは、ボードの上でヨガやフィッシングもできるので、初心者や女性にも人気があるらしい。

運動神経に不安がある方もインストラクターのレクチャーがあるので安心だ。とはいえ、水の上という不安定な場所でバランスを取るため、しばらくの間私の足は生まれたての小鹿のように足が震えた。

そんな滑稽な自分に笑いが止まらないので尚の事安定しない。そして大抵は何度かザブンザブンと落ちてしまうがそれすらも楽しく、いつまでも笑いは止まらない。

このスポーツはインナーマッスルが鍛えられるので、継続すれば美容や健康に効果的だろう。ここで「深い湖に落ちても大丈夫なの?」という質問が飛んできそうだが、心配するなかれ。ライフジャケットを着用し、専用のリーシュコードを足首に装着しているので、インストラクターの指導のもと適切に使用すればまず問題ない。

ボード上の立ち姿もようやく様になってきた頃、ゆっくりと周りの景色を見渡した。広葉樹林が広がる山々に絵の具で染めたような鮮やかな青の湖水、晴れ渡る夏の青空。改めて見渡すと、とんでもなく贅沢な空間に身を置いていることに気付く。そして、今度はゆっくりとボードの上に寝ころび空を仰ぐ。なんて贅沢な時間なんだろう。きっと誰しもがこの非日常の光景とアドベンチャー感に心が踊り、アドレナリン大放出するに違いない。

ビジネスは時に登山に例えられる。しかし、ラフティングやキャニオニングもまた同様だ。数メートルの崖から飛び込む滝壺、繰り返し襲ってくる荒波。穏やかになったかと思えば、予想もしない難局がこれでもかと襲ってくる。咄嗟の判断力や有事の際の取捨選択の決断力は、私の場合こうした遊びの中で磨かれるように思う。だからなのか、登山にせよラフティングにせよ、わざわざ窮地に立ち自らを追い込むようなスポーツをつい求めてしまうのかもしれない。

さて…オフシーズンまでたっぷり時間はある。

「次はいつ行こうかな」。

松本隆宏(文/山本さくら)