私は地主の後継として生まれたことを、特別に意識してきたわけではありません。いつしかその「責任」と「覚悟」を自覚し始めた背景には、両祖母の存在が大きかったと感じるのです。母方の祖父は私が生まれる二週間前に、そして父方の祖父は生後四ヶ月のときに亡くなりました。そのせいか、両祖母ともまるで祖父の生まれ変わりのように可愛がってくれ、次第に私も祖父母への感謝の気持ちと、先祖への畏敬の念が育まれていったのです。ある時、祖父の代で保証人になっていた身内の会社が倒産。数千万円という多額の負債が、父の肩に一気に乗ってきたのです。途方に暮れた父は、幼い私の手を引きながら、毎日のように弁護士事務所、不動産会社、銀行へ足を運び、必死で相談先を探しました。結局、所有していた土地の大半を手放すことで、借金を完済することができたものの、そのときには事態が発生してから既に数年もの月日が経過していました。なぜこんなに時間が掛かったのか、相談する先はなかったのか、的確なアドバイスを受ける手段はなかったのか。今の私の知識とテクニックがあれば、祖母も両親もどんなに助かっただろう。この出来事は、のちに私が「地主の参謀」となる原点になるのです。