イギリス政府が、50年以上にわたり封印し続けた史実を映画化した本作。第二次世界大戦時、世界最強を誇ったドイツ軍の暗号「エニグマ」は、1920年代にドイツの技術者によって考案。その暗号パターン数は、159のあとに0が18個(1垓5900京通り)。10人の人間が1日24時間働き続けても、全組合せを調べ終わるまでに2000万年かかるという。しかもドイツ軍は、毎晩0時に設定を変更。不可能とまで言われた、この途方もない解読に、実在したイギリスの天才数学者アラン・チューリングら計6名の精鋭チームが挑む。
序盤から始まる、静かで美しい映像と切ない音楽は、芸術性と同時に、謎解きの伏線が漂い作品を盛り上げる。なんと言っても、この映画の真髄は、個人プレイに走るチューリングがチームプレイの重要性に気付き、チーム分裂の危機を乗り越えて成功へと導くところだろう。時代背景に縛られた、チューリングの苦悩と知られざる人物像。そして、それを見事に描いた、ベネディクト・カンバーバッチの名演は筆舌に尽くしがたい。
その他、脇を固めるキャストには、実力派の名優たちが集結。人工知能の概念を生み出し、第二次大戦を2年短縮させたと言われるチューリングの功績に敬意を表しつつ、まだ見ていない方にぜひオススメしたい。