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映画『天外者(てんがらもん)』

(掲載:2021年4月 回帰 第5号)

映画『天外者(てんがらもん)』

公開日:2020年12月11日
監督:田中光敏
出演:三浦春馬/三浦翔平/西川貴教/森永悠希/森川葵/筒井真理子/蓮佛美沙子/生瀬勝久
公式サイト:https://tengaramon-movie.com/top.html

地位か名誉か金か、いや大切なのは目的だ

(五代友厚)

久しぶりに映画で涙した。なにより尊敬する五代友厚の生涯の軌跡が映画化されたことが感慨深い。

ところで、「五代友厚」を知っている人はどのくらいいるだろうか。天下の台所として国の経済を支えた大阪は、幕末の動乱期に急速に地盤沈下を始めた。その大阪経済を立て直し、東洋のマンチェスターと呼ばれるまでに発展させた舞台に彼はいた。

数々の素晴らしい功績を遺し、日本経済に寄与した影響は多大にもかかわらず、いつしかその名前は歴史の流れに埋もれていく。

薩摩藩主島津斉彬や西郷隆盛、大久保利通らにその才能を認められた五代は、長崎で伊藤博文、坂本龍馬、岩崎弥太郎らと出会い友情を深めていく。

昨年亡くなった主演の三浦春馬の演技は惹きつけられるものがあり、盟友・坂本龍馬役の三浦翔平、三菱財閥の創始者岩崎弥太郎には西川貴教、初代総理大臣伊藤博文は森永悠希が演じ、作品を盛り上げる。

己を信じ仲間を信頼し、国のために闘った幕末の志士たちの姿は、現代の若者への熱いメッセージが感じられるだろう。

故郷では、周囲から変わり者と呼ばれながらも「誰もが夢を見られる国を目指す」という理想を掲げ信念に生きる五代の姿は、恐れながらも創業時の苦しかった自身の姿と重ねてしまった。

類稀なる知性と豪胆な行動力で、薩摩藩士から実業家へと転身。激動の時代を駆け抜けた男の生き様を学び、自身の生き方を問う時間となった。

松本 隆宏

tengaramon